相続・遺産分割問題のポイント

被相続人に有効な遺言があれば、原則としてその通りに遺産を分ける必要があり、遺産分割の問題は生じません(但し、遺留分の問題は生じ得ます)。

遺言がない場合は、相続人の間で遺産分割協議(話し合い)を行うことになり、話し合いでまとまれば、遺産分割協議書を作成し、その内容に応じて遺産の帰属先が決まります。遺産分割協議書により、不動産の登記名義の変更等も可能になります。

話し合いがまとまらなければ、相続人が他の相続人を相手方として、家庭裁判所に遺産分割調停を申立て、その手続の中で、裁判官や調停委員の意見を聞きながら話し合いを続けることになります。調停でもまとまらない場合には、審判手続に移行し、最終的に裁判官が決めることになります。

具体的事例

(事例3)
父が死亡し、遺言もなく、兄弟間で遺産分割協議を行う必要があります。
兄は兄弟で相続分に応じて平等に分割しようと言ってきましたが、兄はこれまで父から金銭的援助を受けている一方、私は寝たきりの父の介護をしてきた事情があることから、兄と平等に遺産を相続することについては到底納得できません。
このような事情を遺産分割に反映させることはできますか。

生前に受けた金銭的利益などを評価する「特別受益」※1や介護などでの貢献を「寄与分」※2と称して、生前の利益や貢献を金銭的に評価して調整を図るシステムがあります。

(1)特別受益や寄与分を考慮した話し合い解決

特別受益寄与分を考慮して兄弟間の話し合いを行い、合意に至ることで解決できることが理想です。
 特別受益寄与分の有無・評価について対象となる行為ならびに評価方法については専門的な知識が必要なこと、利害が対立するため解決に至っても感情的な「しこり」が残ることも多くあります。早めに弁護士などのアドバイスを受けたり、弁護士を通じて話し合いを行うなど専門家の力を借りることが有効です。

(2) 家庭裁判所の調停による解決

現実は合意に達しないケースが多く見られます。 話し合いで解決できなければ、家庭裁判所に調停を申し立てることになりますが、調停については過去の裁判所判例などの知識、自分の主張を正確に表現する手法など、正当に評価されるよう専門家に任せることをお奨めします。手続きを代理代行する、調停の場に代理人として出席する、調停案を受け入れるべきかのアドバイスを求めるなど、経験豊富で信頼できる弁護士にさまざまな対応を依頼することができます。

(3) 家庭裁判所の審判

調停はあくまで話し合いの手続であるため、調停で合意に至らなければ、最終的には審判手続により裁判所が線を引くということになります。

※1:特別受益

法定相続人のうち、被相続人から生計の資本として生前贈与を受けている者がいる場合には、相続人間の平等の観点から、各自の相続分を定めるにあたって、贈与の事実は特別受益として考慮されます。

特別受益がある場合の各相続分の計算
[Aが過去に被相続人から生計の資本として300万円の贈与を受けた]
Aの特別受益:300万円
相続時の遺産:1,000万円
法定相続人 :AB(被相続人の子)のみ
計算方法:
特別受益300万円を遺産に持ち戻した後、法定相続分で分割し、Aの相続分は分割後特別受益300万円を差し引く
計算結果
Bの相続分:(1,000万円+300万円)x1/2=650万円
Aの相続分:650万円−300万円=350万円

特別受益の典型例は、相続人等が被相続人から不動産購入資金を提供してもらったり、事業の開業資金を拠出してもらったりしたような場合ですが、他にも特別受益に当たるか否かが問題となるケースとして、次のようなものがあげられます。

@ 土地・建物の無償使用
  共同相続人のうち、被相続人の所有する土地・建物を、被相続人の生存中、無償で借り受けて居住していた者は、土地・建物の使用期間について賃料相当額の利益を得たといえますが、これが特別受益に当たるか問題となります。
  裁判例では、相続人が被相続人と同居していた場合は、相続人は占有補助者に過ぎず、被相続人の財産には何らの減少もない(相続人は被相続人と一緒に不動産を使用・占有するに過ぎないのであって、被相続人には他人に同不動産を賃貸して得ることができたはずの収益の減少があるわけではありません)から、土地・建物の無償使用の事実は、遺産の前渡し贈与とはいえないとして特別受益には当たらないとされるのが一般的です(大阪家裁平成6年11月2日家裁月報48巻5号75頁等参照)。一方で、被相続人が自己の所有する土地・建物を相続人の事業運営のために無償で使用させた場合や、被相続人の所有するアパートなどの収益物件に相続人を無償で居住させた場合には、生計の資本としての贈与として特別受益に当たると判断されたケースもあります(東京地裁平成15年11月17日判タ1152号241頁等参照)。
  このように、土地・建物の無償使用の事実が特別受益に当たるかどうかは、被相続人が共同相続人のひとりに土地・建物の無償使用を許諾するに至った事情、被相続人との同居の有無、等々を総合的に考慮して判断されているといえるでしょう。

A 高等教育の費用
  高等教育は将来の生計の基礎となるものですので、その費用は、一般的には、生計の資本としての贈与に当たるといえるでしょう。しかし、被相続人の生前の資産収入や社会的地位からすれば、子女にその程度の教育をするのが普通であるという場合には、その学費の支出は親の当然なすべき扶養義務の範囲内にあるものとして特別受益に該当しないと考えられます。なお、現在の我が国の教育水準に照らせば、高等学校教育も義務教育に準じて親の扶養義務の範囲にあると考えることができ、結局、大学以上の教育に要した費用について特別受益に当たるかどうかが問題とされることになります。
  共同相続人のうち、他の兄弟がみな大学に進学する中で、特定のひとりだけが大学に進学しなかったという場合、被相続人が他の兄弟のために支弁した大学の学費等が特別受益に当たるかが争われることがあります。このような場合、被相続人の生前の資産収入等の他に、兄弟のうちひとりだけが大学に進学しなかった(できなかった)事情等を総合的に考慮して、共同相続人間の平等の見地から特別受益該当性が判断されることになります。例えば、A・B・Cの3人の兄弟のうちでAが最も学力が高く、A自身大学への進学希望を有していたにもかかわらず、Aのみが親からの反対にあったために大学進学を諦めたケースでは、B・Cのために被相続人の財産から支出された学費は、それぞれ特別受益に当たると考えられます。
  なお、学費に関する特別受益の評価については、学費が支出された当時から相続開始までに相当の期間が経過して物価指数に変動が生じているのが一般的であり、学費が支出された当時の金額を現在(相続開始時)の貨幣価値に直して換算された額により評価されます。

※2:寄与分

法定相続人のうち、被相続人への金銭的援助や、介護を行うなど、被相続人の遺産形成に特に貢献した者がいる場合には、これらの貢献度は寄与分として、具体的な相続分を定めるにあたって考慮されます。
寄与分については、遺産形成への貢献の態様が金銭等出資型(金銭の融資、ローンの支払負担等)の揚合、拠出した金銭がそのまま寄与分として認定されることもありますが、扶養型(被相続人を扶養してその生活費を賄い、相続財産の維持に寄与すること)、療養看護型(被相続人の療養看護を行い、看護人依頼費用の支出を免れる等して相続財産の維持に寄与すること)の揚合、夫婦は互いに協力扶助義務を負っており(民法752条)、直系血族及ぴ兄弟姉妹蚊、互いに扶養する義務を負っている(同法877条1項)ことから、被相続人を引き取って扶養したり、生活費を負担しても、それが協力扶助義務や扶養義務の履行の範囲内と評価される揚合には、特別の寄与として考慮されない揚合もあります。

寄与分がある場合の各相続分の計算
[Bが介護等により被相続人の遺産形成に200万円分寄与したと評価された]
Bの寄与分:200万円
相続時の遺産:1,000万円
法定相続人 :AB(被相続人の子)のみ
計算方法:
遺産から寄与分を差し引いた後、法定相続分で分割、Bの相続分は分割後に寄与分を200万円を加える
計算結果
Aの相続分:(1,000万円−200万円)x1/2=400万円
Bの相続分:400万円+200万円=600万円

(4) 家事事件手続法

家事事件の手続については、これまで家事審判法によって運用がなされてきましたが、平成25年1月1日から、家事審判法に代わり、家事事件手続法が施行されました。ここでは、家事事件手続法における改正点を中心に調停及び審判の手続についてご説明いたします。

@ 提出書類
  遺産分割調停を申し立てる際には、裁判所に以下の書類を提出しなければなりません。
 a 申立書
 b 相続人関係図
 c 被相続人及び相続人の戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
 d 相続人全員の住民票又は戸籍附票
 e 遺産目録
 f 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し又は残高証明書、有価証券写し等)

 申立書には、当事者及び法定代理人、申立の趣旨及び理由、事件の実情(遺産分割協議が話し合いで解決できなかった理由等)を記載しなければなりません。申立書は、これまで相手方には送付されませんでしたが、家事事件手続法においては、原則として相手方に申立書の写しが送付されることになります。したがって、申立書の記載事項については、相手方に送付されることにより紛争を激化させ、円滑な調停手続の進行を妨げることがないよう注意する必要があります。
 上記の必要書類は、弁護士に依頼をしていただければ、弁護士が全て作成・取付を行うことになります。

A 調停期日の運営
  家事事件手続法は、当事者本人が調停期日に出頭しなければならないが、やむを得ない事由があるときは代理人を出頭させることができると規定しています(家事事件手続法258条1項、51条2項)。
  従前の家事調停手続においては、事件の終了時を除いて、当事者双方が顔を合わせないまま進行することが一般的でしたが、家事事件手続法のもとでは、調停期日毎に進行予定や次回期日に向けた課題等の説明を双方当事者本人立会のもとに行うことが予定されています。
  しかし、現在の裁判所の運用としては、当事者間に感情的な対立が激しい場合等、当事者が顔を合わせることにより調停手続の円滑な進行を妨げるような事情があれば、代理人のみが調停期日に出頭して手続を進めることも多いのが実情です。

B 電話会議システム
  家事調停事件は原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てなければならないため、相手方が遠隔地に居住している場合に不都合が生じます。また、家事事件手続法においては、当事者が合意で定める家庭裁判所にも管轄が認められることになりましたが、当事者に代理人が就いていない場合等には合意が得られないことも多いと思われます。家事事件手続法においては、当事者が遠隔の地に居住しているとき、その他裁判所が相当と認めるときは調停の期日を電話会議システムまたはテレビ会議システムを利用して進めることができることになりました(家事事件手続法258条1項54条)。

箕輪法律事務所では、豊富な経験をもとに依頼人の立場にたって法的に保証された権利を最大限に確保いたします。法律の専門家である私たちにご遠慮なくご相談ください。

 

弁護士報酬について
● 遺産分割調停
内容  
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成功報酬 経済的利益の5〜15%の範囲内で頂戴いたします。比率については、ご相談の上決定させていただきます。

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