不動産・建築:隣地の所有者が、長年境界を大幅に侵害して家を建てているため、相談者は70坪の所有地を売却することも出来ない。
2020.11.19解決事例
依頼主 50代 男性
相談前
相談者の父親は、15年前自宅から少し離れた住宅地の中に70坪の土地(地目、雑種地)を交換で取得し、将来売却することを考えて所有していました。
隣地の所有者は、10年前に越してきて家を新築しておりますが、隣地との境界石は取り去られ境界から1㍍も父親の土地に入った位置に塀が作られ、塀に近接して建物が建てられています。その事実に父親が気づいたのは建物が完成して、隣家が越して来た後のことでした。
父親は、隣家に何度となく、善処方を申し入れ、越境している土地部分を相当額で売却することも提案しましたが、相手方はのらりくらりの対応で一向に解決しないまま時間が経過していたところ、その父親が昨年亡くなり、相談者が相続することになりました。相続税の支払いのこともあり、この際、境界問題を解決してこの土地を売却したいという相談でした。
相談後
相談者と共に現地を見、公図、実測図からも隣地所有者の境界侵犯は、相談者の主張通りで間違いないことが、確認できたため、相手方にはその事実を指摘して塀及びこちらの所有地を占有する建物部分の撤去を求める内容証明郵便を出した上で交渉を持ちましたが、相手方の対応は不誠実で満足な回答が得られなかったので、訴訟を提起しました。
裁判所は、早い段階で和解による解決を双方に勧め、相手方が越境部分を含めた10坪の土地を時価相当額で買い取る形で和解が成立しました。
程なく、相談者は本件土地60坪を売却することができ、相続税の支払いも無事済ませました。
弁護士からのコメント
境界を侵害して建物が建っているような場合に、侵害している建物部分のみを撤去するというのは、現実的な解決方法とは言えませんが、当事者の話し合いで双方が納得のいく金銭的な解決を図ることは、相隣関係特有の感情問題もあって困難であるのが、一般です。
相談者の父親が長年交渉したにも拘わらず生前解決できないままだったというのもある意味でやむを得なかったとも言えます。しかし、他人の土地を占有するような建物所有は、法的には認められませんので、裁判になって相手方が裁判所の和解勧告を無視することは、現実的には出来ません。
金銭的な解決は、相手方の資力とも関係しますが、金額を多少下げるか、分割払いなどで和解を成立させることも、十分可能です。