不動産・建築:土地利用が、借地契約によるものか、それとも使用貸借契約なのかが争われた事例
2020.11.19解決事例
相談前
相談者は、父の代からA所有の50坪の土地に家を建てて居住していたところ、Aが亡くなって息子のBが土地を相続することになりました。この度Bから、この土地は好意で使用させていたものなので、この際建物を取り壊して更地にした上で返還して欲しいという申し入れを受けました。
父の代から、地主に対しては毎年暮れの12月に一年分の賃料として5万円払っているので、借地権者として権利主張ができないのかという相談でした。
相談後
借地権を主張することは、一概に間違いとは言えませんが、近隣の時代の相場からすると月額4000円程の地代は、近隣の相場から見て1割程度であり、固定資産税にも充たないことから、これを裁判所で認めさせることは難しいと考えておく必要があります。
借地権が否定されたとしても、使用貸借契約が先代からあったことは、間違いないので、建物がまだ十分に使用に堪える状態である以上、その間は土地の使用権を主張することが出来ます。
当職が相談者の代理人として、Bと交渉を持ちましたが、即時の返還にこだわる先方との話はまとまらず、先方からの提訴となりました。
裁判では、早い段階から和解手続きに入り、裁判所の調整もあり、本件土地の時価額の50%1800万円を解決金として地主側から受け取ることを条件に土地を返還することで和解が成立し解決しました。
弁護士からのコメント
使用貸借契約は、契約の目的がなくなるまで存続します。土地の使用貸借の目的は、家を建ててそこに居住することですから、建物が古くなって居住に堪えなくなるまで、土地を使用する権利を地主に対して主張できます。
そのことを、考えると相談者は、まだ相当期間住める家を放棄して土地の明け渡しに応ずる以上本件土地の時価額の5割を和解金として取得しても決して多すぎるということはないと考えられます。