箕輪法律事務所

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解決事例

遺産相続:【依頼者:娘】【父の遺言書】【遺産分割】作成者(父)の意向と遺言書の解釈が違う? 協議を経て、適切に遺産分割を行った事例


2020.11.19解決事例

依頼主 60代 男性

相談前

父親が死亡し、その長男と長女の二人が、相続人となったケースでした。父親は、地方都市の事業家でかなりの不動産(時価総額1億3000万円)と預金(総額1億5000万円)を持っていました。残された公正証書遺言には、「不動産は全て同居の長男に相続させる」とだけ書かれていたため、東京に住む長女は、不動産は諦め、残された1億5000万円の預金につき法定相続分の2分の1だけを確実に自分のものにしたいと相談に来ました。

相談後

長女としては、公正証書遺言の意味するところは、不動産は長男が全て取得して、預金については長男と半分ずつ分けるものだと理解していたため、調停などの法的手続きをとっても7500万円以上は自分のものにならないので、早く兄と話しをつけて欲しいという意向でした。長男も、同様の考えでこの公正証書遺言を作成したものと思われました。

しかし、この解釈は間違いなのです。「長男に不動産全てを相続させる」ということは、遺産分割方法を定めたものであって、法定相続人の相続分を指定したものではないのです。したがって、二人の相続分は、2分の1と2分の1のままですので、遺産総額2億8000万円の遺産につき、二人とも1億4000万円ずつ相続する権利があることになります。

長男は、1億4000万円のうち、不動産で1億3000万円を取得しますので、預金については1000万円の範囲でのみこれに与ることができます。一方、長女は、預金1億4000万円を相続することになります。

本件では、長男がこの分配方法に激しく抵抗して話し合いが進まなかったため、こちらから相手方の住む中国地方のある家庭裁判所に遺産分割の申立をし、相手方の代理人に就いた弁護士と協議を進め、最終的に父親の収集した絵画を長女が全て相続することを条件に預金については、長男の取得分を1000万円増額して2000万円することで調停が成立し、解決となりました。

弁護士からのコメント

遺言は、本人の最終意思を確認するものなので、民法に定める方式に従うことが求められますが、遺言の解釈も遺言者の合理的意思に合致するように、判例・実務の集積がありますので、安易に考えて作成することは、本件のような失敗につながります。

遺言書は、公正証書の形と自筆証書の形がありますが、その作成にあたっては弁護士に相談することをお勧めします。

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