遺産相続:【依頼者:子】【遺産分割】当事者が購入したマンションが特別受益になるかが争われた事例
2020.11.19解決事例
相談前
ご相談者は、亡くなられた父親の遺産について、相手方である兄との間で話し合いをされていましたが、相談者が「兄の住む港区のマンションは父親の援助で購入されたものなので特別受益にあたる」主張したところ、兄はこれを争い、逆に「ご相談者が私立の医学部を出て医者になるまでにかかった学資こそ特別受益」だと反論され、分割協議が進まないということで来所されました。
相談後
兄の住むマンションが父親の援助で購入されたものであるかを確かめるために登記簿謄本を取り寄せて確認したところ、マンションの購入資金について抵当権の設定はありませんでした。
さらに父親の自宅の土地建物の登記簿謄本を確認したところ、マンション購入時期に父親が購入代金の一部と思われる借り入れをして、抵当権を設定していたことがわかり、内容をご相談者に伝えました。
説明を受けたご相談者は、兄にその点を指摘したところ、兄は、13年前に父からマンションの購入資金の援助を受け、その資金は父から借り入れた形にして月々定額を返済する内容の借用証を作成したけれど、借入金の返済は一切していないことを認めました。その時点で、ご相談者は、当事務所に遺産分割協議の代理を依頼されました。
その後兄の代理人になった弁護士と分割協議を進めた結果、兄側は、マンションの購入資金の援助を受けたことを認めました。
一方、文系の私立大学を卒業した兄の授業料と私立の医学部を卒業した依頼者の授業料との差額は、依頼者側の特別受益と考える立場もありますので、その金額がほぼマンションの代金と同じことから、特別受益はお互いに主張しないことで合意しました。
最終的に、金融資産は二人で当分に分けることとし、医院を継ぐことになった依頼者が父親の自宅兼医院の土地建物を相続するにあたり若干の代償金を兄に支払うことで、家裁に対する調停手続きをせず、話し合いで遺産分割協議が成立しました。
弁護士からのコメント
当事者間の話し合いはどうしても感情的になり、さほど難しくない調整も出来なくなってしまうということが往々にしてあります。弁護士へのご依頼は早めにされることをおすすめします。